ホーム / 消防手続きのデジタル化
消防の手続きは、紙で通うものではなくなりつつある
消防署に書類を持参し、副本に受付印をもらって帰る。長くこれが当たり前でした。 いま、それが変わりはじめています。申請から消防検査までをオンラインで完結させる取り組みが、 実際に動いている消防本部があります。
最終更新

背景
「19手続きの電子化」という宿題
令和2年度以降、総務省消防庁は各消防本部に対し、火災予防分野の各種手続について電子申請等の導入を求めてきました。 少なくとも19の手続きを電子化するという水準が示され、あわせて建築確認に係る消防同意事務の電子的な取扱いも整理されました。
とはいえ、消防はもともと紙と対面で回ってきた組織です。 台帳は紙、決裁は紙、検査は現地。ここに「電子申請を入れる」と言われても、 どこから手をつけるのかで結果がまったく変わります。
以下は、私が予防課で携わった経験をもとに、電子化でどんな業務が変わるのかを整理したものです。 申請の受付から消防検査までを一貫して電子で扱えるようにし、あわせて紙の台帳を電子に移す、という考え方です。 この取り組みは外部からも評価をいただきましたが、それは所属組織の取り組みとしてであり、 個人の功績ではありません。
取り組みの中身
電子化で変わる7つの業務
ひとつずつ順番に、ではなくまとめて入れることが肝心です。 申請だけ電子にしても、決裁や台帳が紙のままなら職員の手間はむしろ増えます。 「始まりから終わりまで一貫して電子で完結する」形にして初めて、負担が減ります。
各種申請・消防同意の電子申請フォーム
手続きごとに電子申請フォームを用意し、ウェブサイトで公開します。 届出から始めて、許可申請などへ順に広げていくのが現実的です。 消防同意は、対象を小規模な建物に絞って受付を始め、段階的に広げていく進め方が取りやすいやり方です。
電子台帳への記録と電子保存
防火対象物の情報を一元管理し、紙で出された申請や過去の台帳もPDF化して電子台帳に紐づけます。 これで過去の申請書類や消防同意書類を瞬時に呼び出せるようになります。 電子で受け付けたものは、そのまま電子で決裁し、電子のまま保存する流れにします。
電子署名つきの通知
「喫煙、裸火使用、危険物品持込み承認申請」のように消防長の承認が必要な手続きは、 これまで公印を押した紙の通知が必要でした。自治体向けの電子認証の仕組みを使って 電子署名つきのPDFを交付できるようにすれば、申請者が窓口に来る必要がなくなります。
オンライン会議やタブレットを使った消防検査
軽微な工事などに対象を限れば、オンライン会議の仕組みを使った消防検査も実用になります。 現地で検査する場合も、電子で提出された図面をタブレットに入れて持っていけば、 紙の図面を抱えて回る必要がなくなります。
紙書類のPDF化と電子台帳への集約
紙書類のPDF化は、一気には終わりません。少しずつでも続けておくことが後で効いてきます。 長年ためこんだ紙台帳を電子台帳に集約できれば、 査察で出向いた先からでも、過去の届出書類を確認できるようになります。
事前相談のオンライン化
電子申請フォームで事前相談の予約を受け付け、図面などを添付できるようにします。 消防同意や工事に関する具体的な相談が、来庁せずにできるようになります。 遠方の設計事務所にとっては、これが一番効く変化かもしれません。
手数料納付の電子化
危険物関係の許可申請には手数料の納付があり、そのたびに事業者が窓口へ来ていました。 キャッシュレスで払えるようにすると、現金の持ち出しが不要になります。 行政側も現金の取り扱いが減り、双方の負担が軽くなります。
利用する側から見ると
事業者・設計者にとって何が変わったか
-
消防署に行かなくても手続きが終わる
遠方の事業者や指定確認検査機関から、特に好評を得ています。 副本の返却はなくなり、代わりに電子受付番号が発行されるので、それを記録しておく運用に変わります。
-
書類の直しが早い
修正のやり取りがオンラインで完結するため、「持って行く → 直しを言われる → 持ち帰る → また行く」の往復がなくなります。 修正にかかっていた時間が、そのまま消えます。
-
軽微な工事なら、検査もオンラインで受けられる場合がある
現地検査と比べて、移動にかかっていた時間がまるごと不要になります。これは行政側だけの話ではなく、 立ち会う事業者側にも同じだけの時間が返ってきます。
-
手数料の支払いに現金を持ち出さなくていい
危険物の許可申請などで発生する手数料を、キャッシュレスで払えるようになります。
ただし、全国どこでもこうなっているわけではありません
電子申請の導入状況は消防本部ごとにまったく違います。フォームの数も、対象手続きも、オンライン検査の可否も。 まずは所轄の消防本部のウェブサイトで「電子申請」を探してみてください。 あるのに知られていない、というケースがかなりあります。
なお、制度を用意しても、実際に使われるようになるまでには時間がかかります。 いまはまだ紙のほうが多い、という消防本部がほとんどです。
このページについて
本ページは、筆者が予防課で実際に携わった電子化の取り組みをもとに、 事業者・設計者の側から見て何が変わるのかという観点で書いています。 書いているのは、すでに公表されている範囲の内容にとどめています。
評価を受けたのは所属組織の取り組みであり、個人の功績ではありません。 また、記載は筆者個人の見解であって、所属する組織の公式見解ではありません。
制度・運用は執筆時点のものです。電子申請の可否や対象手続きは消防本部ごとに異なりますので、 実際の手続きは必ず所轄の消防本部にご確認ください。
NEWSLETTER
「古い仕組みを、新しい仕組みに変える」話も書きます
消防法令の解説だけでなく、行政の手続きそのものをどう軽くするか。中から変えた経験をもとに書いていきます。
いつでも解除できます。個別の法令判断や案件のご相談はお受けしていません。